ファッションに凝っているなら、時計はエルメスを選んでみるとよいだろう。独特のエレガンスを放つエルメスの時計を着ければ、手首にもさりげない存在感を与えられる。エルメスの時計に秘められた魅力や、コレクションごとの特徴を解説する。
時計ブランドとしてのエルメス
老舗メゾンとして世界的に知られるエルメスは、時計ブランドとしてはどのような歴史をたどってきたのだろうか。エルメスを象徴する馬車のマークに込められた意味と併せて確認しておこう。
腕時計製造の歴史
エミール・エルメス
©︎Roger Schall
3代目のエミール・エルメスは、馬具の製造で培ってきた皮革加工の高い技術力を活かしてバッグの製作をスタートさせるとともに、1928年には腕時計製造にも着手するなど事業を拡大した。
1837年に馬具工房として創業したエルメスは、1928年に腕時計製造を開始。その後しばらくはジャガー・ルクルトやユニバーサル・ジュネーブと共同で時計を作っている。
1978年には時計専門会社の「ラ・モントル・エルメス」をスイスに設立し、「アルソー」や「ケープコッド」といった傑作を生み出した。2003年には、名門ムーブメントメーカーのヴォーシェと提携を結んでいる。
高級品メーカーとして培ってきたノウハウをデザインに反映させながら、優秀な時計会社と組んで性能も重視してきた点が、エルメスの時計製造の歴史における特徴だ。
馬車のマークに込められたメッセージ
エルメス
©︎HERMÈS
四輪馬車と従者が描かれたエルメスを象徴するマーク。これは19世紀に活躍したフランス人画家アルフレッド・ド・ドルーの絵に着想を得てデザインされたもので、1945年に商標登録されている。
エルメスを象徴するマークには、自社のルーツにちなんだ四輪馬車と従者が描かれている。フランス人画家ドルーの絵にインスパイアされたデザインだ。
本来の四輪馬車には馬を操る主人が乗っているが、エルメスのマークには主人が見当たらない。「主人=お客様」と見立て、製品に命を吹き込むのはあくまでも購入者であることを語りかけているのである。
「エルメスは最高品質の製品を提供するが、実際に良品となるかどうかはあなた次第だ」というメッセージが込められている。
エルメスの時計が評価される理由
他の高級時計ブランドと同じく、エルメスの時計にも高品質をうたうだけの魅力が秘められている。特筆すべきふたつのポイントを見ていこう。
個性的で美しいデザイン
エルメスの時計が評価を集める理由のひとつに、個性的で上品なデザインが挙げられる。名門らしい、シンプルで洗練された表情が魅力だ。
多くの高級ブランドが機能美を追求する傾向がある一方で、エルメスはあくまでも良質なデザインにこだわっている。華美な装飾を抑え、上質な印象を醸し出している点も特徴である。
豊富なバリエーションから選べることも、エルメス時計の醍醐味といえるだろう。多彩な形状や素材、カラーを比較すれば、お気に入りの1本を探しやすい。
品質の高い革素材と優れた技術
革素材に強いこだわりを持つエルメスは、ストラップの革にも高品質なものを採用している。他のブランドには見られない色味と質感は、エルメスの時計における大きな魅力である。
エルメスの革製品は、すべてがフランス国内の工房やアトリエで生産されている。受け継がれてきた技術が、熟練した職人たちの手作業により製品に注ぎ込まれているのだ。
時計として優れた性能を備えている点も、特徴のひとつである。豊富な資金力を背景に名門と手を組んで生み出される時計の品質は、名だたる高級時計メーカーにも引けを取らないレベルだ。
エルメスを代表するコレクション
数あるエルメス時計のラインナップから、男性が着けられる人気コレクションを紹介する。それぞれの特徴や魅力をチェックしておこう。
参考記事:https://www.rasupakopi.com/hermes_z141.html
馬具の形から着想を得た「アルソー」
アルソー 78
©︎HERMÈS
特徴的なラグやインデックスといったアルソーのエレメントはそのままに、ベゼルにはマイクロブラスト仕上げのチタンを用いた「アルソー 78」。ストラップには柔らかく、革本来の風合いが楽しめるヴォー・バレニアが使われる。クォーツ。SS×Ti(直径40mm)。3気圧防水。
1978年に誕生した「アルソー」は、エルメスのメンズ時計を代表するコレクションのひとつである。現在もメゾンの専属デザイナーを務めるアンリ・ドリニーがデザインを手掛けている。
上下非対称なデザインが特徴的なラグは、馬具の「あぶみ」から着想を得たデザインである。フランス語で「アーチ」を意味するコレクション名は、ラグの片方がアーチ形になっていることから付けられている。
斜めにレタリングされたインデックスも個性的だ。馬がたてがみをなびかせながら疾走する様子が目に浮かぶようである。