ヴァシュロンコンスタンタン ヒストリーク 222

2022年に発表された新作モデルのうち、当店GINZA RASINが「傑作」と選ぶ腕時計。第2位はヴァシュロンコンスタンタンのレガシーを現代に蘇らせた、ヒストリークコレクション Ref.222です!

近年、各ブランドがリリースする「復刻モデル(かつて製造していた歴史的モデルのデザインやコンセプトを踏襲しつつ、現代的な技術で以て再リリースする手法)」には名作が居並びますが、その中でも新作Ref.222は、傑出した一本と言えます。

そんなRef.222を手掛けるヴァシュロンコンスタンタンは、パテックフィリップ・オーデマピゲと並んで、世界三大時計ブランドの一角を成す名門です。さらに創業1755年と、数あるハイメゾンの中でも老舗中の老舗であり、「一度も時計製造の手を止めず、連綿と経営を続けてきた」といった意味では、現存する時計ブランド最古の存在となります。

 

ヴァシュロンコンスタンタンのコレクションは、現代では珍しく、ドレスウォッチやクラシカルウォッチが中心的です。パトリモニーやトラディショナル、マルタ等々、名作を挙げるとキリがありません。

しかしながら、雲上ブランドらしい高貴さとスポーティーなデザイン・性能をバランスよく備えたラグジュアリー・スポーツウォッチラインも展開しております。それが、オーヴァーシーズです。

ヴァシュロンコンスタンタン クロノグラフ

オーヴァーシーズ自体は1996年初出。前述したパテックフィリップ ノーチラス,オーデマピゲ ロイヤルオークなどのラグジュアリー・スポーツウォッチと比べると、新しいコレクションと言えます。

しかしながら、その出自は1977年に遡ることができます。

この年、創業222周年を迎えたヴァシュロンコンスタンタンは、アニバーサリーイヤーを型番としたモデルを発表しました。222本限定生産された、Ref.222がこれに当たります。

ヴァシュロンコンスタンタン 222

※オリジナルのRef.222

同年代のラグジュアリー・スポーツウォッチのパイオニアらと同じく、ステンレススティールを素材に(実際は上の画像のように、ゴールドモデルもリリースされましたが)、ケース・ブレスレットが一体型となった意匠。当時の雲上ブランドとしては珍しく大きい37mmサイズ。一方で雲上ブランドの高級機らしい薄く上品な外装(なんと、厚さ7mm!ドレスウォッチと見紛う薄さです)、そしてこれまでのステンレススティール製モデルではありえないような極上の仕上げが施されることで、高級スポーツウォッチとして完成していたことが、画像からもおわかり頂けるのではないでしょうか。

なおオリジナルのRef.222は、発表当時では珍しい無反射コーティング サファイアクリスタルガラスの採用や、ダイバーズウォッチの回転ベゼルを彷彿とさせるデザインのねじ止めベゼル―まるで舷窓を彷彿とさせる―の搭載。さらには薄型でありながらも120m防水を堅持する様は、最先端スポーツウォッチであったことも特筆すべき点です。

※余談ですが、ロイヤルオークもノーチラスも「舷窓」が一つのデザインコンセプトとなっておりました。
天才デザインーとして名高いジェラルド・ジェンタ氏がロイヤルオーク、ノーチラスともにデザインしたことは有名ですが、前者が戦艦ロイヤルオーク号の、後者が潜水艦ノーチラス号を名前の由来としており、それぞれ戦艦・潜水艦の舷窓がデザインモチーフとなっております。

Ref.222のデザイナーはジェラルド・ジェンタ氏ではなく、ブレゲのマリーンやタグホイヤーのキリウムを手掛けたヨルグ・イゼック氏に依ります。
Ref.222は舷窓をモチーフにしたかどうかは定かではありませんが、1970年代に花開いたラグジュアリー・スポーツウォッチとデザインコードを共通していると言えます。

 

このRef.222が、2022年、現代に蘇りました。本項でご紹介している2022年新作ヒストリーク Ref.222です。

ヴァシュロンコンスタンタン 2022年新作

出典:https://www.vacheron-constantin.com/jp/ja/home.html

前述の通り、Ref.222は現行オーヴァーシーズの始祖と言われています。

しかしながらRef.222は1984年にRef.333へ、そして1989年にフィディアスへとアップデートを果たしており、オーヴァーシーズはRef.222のみならず、とりわけフィディアスの影響を強く受けていると言われています。

一方でこの度の復刻は、純然たるRef.222の復刻です。

そう、「純然たる」と称するのは、このヒストリーク Ref.222がオリジナルのデザインや薄型エレガンスを、忠実に復刻しているためです。

ヴァシュロンコンスタンタン 2022年新作

出典:https://www.vacheron-constantin.com/jp/ja/home.html

薄型ケースと一体型になった薄いブレスレット。シンプルで高い視認性を誇りながらも、美しいシャンパンカラーが風格漂う文字盤。独特のベゼル、そして文字盤12時位置とラグ5時位置のマルタ十字・・・実機はまだ見ることができておりませんが、まさしく正統派ラグジュアリー・スポーツウォッチを、当時の鮮烈なまでの印象とともに、現代に蘇らせたという表現がふさわしいでしょう。

また、ツヤ消し仕上げをメインに随所にポリッシュ仕上げを加えたコンビネーション式とすることで、薄型ながらも立体的な造形を実現しています。とりわけエッジ部分に施されるポリッシュは、雲上ブランドならではの丁寧な仕事を感じさせますね。

 

なお、1970年代のラグジュアリー・スポーツウォッチを語るトピックに「ステンレススティール製」が挙げられますが、新作ではイエローゴールド製モデルとしてリリースされました。

現在、市場を熱狂させている―異常とも言える相場急騰を伴って―ステンレススティールではなく、イエローゴールドで復刻させたヴァシュロンコンスタンタン。その思惑はさておき、流行に流されない、ヴァシュロンコンスタンタンの大御所としての風格をも感じさせます(とは言え、復刻Ref.222の成功を受けて、今後のステンレススティール製モデルのバリエーション追加も気になるところです)。

 

もっとも、デザインはオリジナルを踏襲しているとは言え、異なる点もあります。

まず、ケース直径は変わらず37mmですが、厚さがわずかに増して7.95mmとなりました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です